隠居青年

ミニマルなモノやコト

安部公房「箱男」について

 

f:id:usagitokameblog:20180226152258j:image僕は安部公房の世界観がとても好きです。

有名な作品としては数ある中でも「砂の女」とこの「箱男」だと思います。

 

簡単に説明すると「ダンボール箱を被った男の記録」である。

ダンボール箱を被った男が街を彷徨する場面を想像すると滑稽だったり不気味さを感じると思う。

 

だけど本書を読んで箱男が見る世界とそうでない普通の人が見る世界は異なり、箱男の視界はダンボール箱の小さな穴しかなく花や女性の脚を眺める。一方で所謂普通の人は道端で花を見ても気にも留めず歩く。

 

箱男は不気味な存在だけどそこから見る世界は独立していて強い意志がある。見たいものを見る執着を感じる。

 

一方で普通の人は見た目は無個性で見る世界は同一でそこに意志はなく、見たいものが何であるかも分かっていないように思う。

 

僕はさすがにダンボール箱を被って街を彷徨する勇気はないけど箱男のように世界から自分を遮断することによって自分と社会を見つめ直すことも必要なのではないか。

 

作品の内容とは関係ないが「箱男」の装丁がとても気に入ってます。歪んだ家にThe Box manの文字と青味がかったグレーのバランスがクールだと思います。